DVとは、配偶者や交際相手など親密な関係において、一方が他方をコントロールし、従わせようとして用いる威圧的な行動パターンのことです。
DVの加害者は、暴力、威嚇、理不尽な行為、さげすみ、搾取などによって被害者の中に恐怖心を起こさせることで、無理やり自分に従わせ、支配と抑圧の構造をつくり上げます。そして、DVの加害者は、相手を支配し、意のままにコントロールし、安心して人間らしく生きる権利を奪います。また、暴力には身体的暴力、精神的暴力、社会的暴力、経済的暴力、性暴力が含まれます。

<暴力にはサイクルがあります>

多くの場合、毎日のように激しい暴力をふるうわけではありません。暴力をふるったことを謝罪し、急に優しくなったりするサイクルの中で、暴力の頻度や程度が高くなっていきます。時折見せる優しさが「今度は変わってくれるかもしれない」という期待につながり、暴力から離れることを困難にする要因のひとつとなっています。

<暴力が女性に与える影響 >

DVは目に見える怪我だけでなく、心にも大きな影響を及ぼします。いつ起きるかわからない暴力におびえ、安心できる時間が無くなります。感情が麻痺した状態になったり、加害者の顔色をうかがう生活が続く中で、自分の感情や思考力を失っていき、心身に深刻なダメージを与えます。様々な暴力を受ける中で、暴力の原因は自分にあると思わされ、自己肯定感が低くなり、無力感や自責感が強くなります。「子どものためにも自分さえ我慢していれば家庭を壊さなくてすむ」と考えるようになり、相談することがさらに困難になっていきます。

<DVは児童虐待>

DVがある家庭環境は、児童虐待であると考えます。DVのある家庭で育つ子どもは、DVを直接目撃していなくても、家庭にDVがあることを知っています。そして、子どもに恐怖と緊張を与え、暴力をふるわれたのと同じくらい深い心の傷を残します。子どもは恐怖から自分を守るために、ひたすら見なかった、感じなかったことにしようとして、感情を押し殺し、無表情になったり、さまざまな心身の症状が起ります。また、考えることをやめて、一見普通にふるまっている子どももいます。DVのある家庭では、加害者から子どもへの直接的な虐待が行われていることも多々あります。親のDVを見聞きすることや、激しい体罰、暴言を受けることにより、脳の一部が萎縮や肥大することが研究結果から明らかになっています。そして、暴力のある環境から逃れたとしても、心の傷は簡単には癒えないため、ケアが必要とされています。

<参考文献> 保育通信 No.732 2016,4,1 友田 明美